メルヘン街道麦草峠

長野県茅野市,南佐久郡八千穂村,小海町; 2002年7月28日撮影


信州ツーリング,最後はいつもこの峠。白樺湖から2時間ほどで到達します。ここから真っ直ぐ下
れば八千穂村,あるいは途中で分岐して松原湖へ。そして小海線に拾ってもらって帰る,と。

国道299号線はメルヘン街道という洒落たニックネームを持つ山岳道路です。茅野側は中腹のか
なり高いところまで味気ない別荘地。しかしさらに高度を上げると針葉樹の原生林,峠の草原,八
千穂側の白樺の純林など,メルヘン街道の名にふさわしい変化に富んだ景観が展開します。
 

 正面には,縞枯山

標高2000mを超えて,佳境に入る。このあたりは亜高山帯,針葉樹の深い森。標高2100m
を示すカンバンを過ぎると道は平坦になる。ここでスパート!

峠は明るい,クマザサの繁る草原である。道路からすこし引っ込んで,麦草ヒュッテでひと休み。
そして,あたりの高山植物と山野草の花を。
 

アキノキリンソウ (秋黄輪草) Solidago virga-aurea var. asiatica
 キク科アキノキリンソウ属

日当りのよい山地に見られる多年草。高さ20〜80cm。葉は卵形から先の尖った披針形で長さ
4〜9cm,幅1.5〜5cm。茎の先や上部の葉の脇に,散房状または総状に径1cm位の多数
の黄色い花をつける。和名は秋に咲く,キリンソウに似た花の意。
 

ホソバノヤマハハコ (細葉ノ山母子) Anaphalis margaritacea var. angustolia
  キク科ヤマハハコ属

長野県以西の西日本のやや高い山地に生える多年草。高さ30〜60cmで直立する。葉は細長く,
長さ6〜9cm,幅は2〜6mm程度。葉の幅がヤマハハコに比べてやや細く,表面に薄く綿毛が
残って白っぽく見える。茎の先端に白い頭花を散房状につける。白いのは総苞片で中心に淡黄色の
小花を咲かせる。エーデルワイスの親戚。案外,写真写りの良い花である。
 

テガタチドリ (手形千鳥) Gymnadenia conopsea
   ラン科テガタチドリ属

亜高山帯の草原に生える多年草。高さ30〜50cm程度。葉は4〜8枚つき,互生して広線形,
長さ10cmほど。茎の先に穂状花序を出し,さしわたし1cmほどの多数の淡紅紫色の花を咲か
せる。地中に手の形をした多肉根があり,和名の由来となっている。
 

ヤマオダマキ (山苧環) Aquilegia buergeriana
 キンポウゲ科オダマキ属

深山の林の縁や道端に生える多年草。高さ30〜50cmかそれ以上。茎はまばらに枝分かれして,
先に径3〜3.5cmの花を下向きにつける。花弁は5個で先はクリーム色,基部はわずかに外側
に反って距(角状の部分)になる。萼はとがった卵形,紫褐色でやはり5個ある。萼も淡黄色にな
っているものも多く,キバナノヤマオダマキと呼ばれる。
 

 ...ということです。

ロープの向こう側にいる人たちは,麦草ヒュッテの管理する高山植物園(たしか有料)を観察して
いるところ。決して注意書きを無視して踏み荒らしているわけではないので,念のため。
 

シラタマノキ (白玉ノ木) Gaultheria pyroloides
  ツツジ科シラタマノキ属

亜高山帯の荒地に生える常緑の小低木。上部の葉の脇や枝先から総状花序を出し,2〜6個のつぼ
形の花を下向きに咲かせる。花冠は白く径6mmほど,先は浅く5裂する。名前は果実の様子から。
果実は白い球形で径約8mm,つぶすとサロメチールの匂いがするという。
 

  峠はクマザサのはらっぱ

峠の一帯だけは開けているが,あとは深い森の中。火山活動が早い時期に落ち着いた八ヶ岳の北部
山域はこうした原生林に覆われている。明るい草原の中を道路がまっすぐ伸びている。気持ちはワ
カルが,飛ばしすぎ。バイクの皆さん。
 

オヤマリンドウ (御山竜胆) Gentiana makinoi
  リンドウ科リンドウ属

亜高山帯〜高山帯の草地に生える多年草。高さ20〜60cm。葉は対生して広被針形または狭卵
形,長さ2.5〜7cm,幅0.5〜2.5cm。縁はなめらか。直立した茎の先端とすぐ下の葉
の脇に数個の花をつける。花冠は濃い紫色で長さ2〜3cm,平開しない。
 

  登山道

北八ヶ岳縦走路。山の中の幹線道路である。このまま南へ,丸山,中山,天狗岳。夏沢峠を過ぎる
と荒々しい山容の八ヶ岳の主脈へ。自転車ではとても入れないので,大人しく引き返す。
 

クガイソウ (九蓋草) Veronicastrum sibiricum
 ゴマノハグサ科クガイソウ属

山地の開けた草原や斜面に生える多年草。高さ100〜120cmほど。長楕円状で両端が尖る披
針形の葉が4〜8枚輪生する。和名は九階草または九蓋草で,輪生した葉が何段にも重なる様子を
たとえたもの。
 

シナノオトギリ (信濃弟切) Hypericum kamtschaticum var. senanense
 オトギリソウ科オトギリソウ属

岩場に生える高山植物だが,亜高山帯の林縁にも生える多年草。高さ30cmほどになる。葉は卵
状楕円形で長さ2cmほど,明点がある。夏,径2cmほどの黄色い花を咲かせる。山野に生える
同属のオトギリソウは薬草として用いられる。和名は,秘薬を人にもらした弟を兄が怒って斬った,
という伝説に由来するという。
 

ハクサンフウロ (白山風露)  Geranium yesoense var. nipponicum
   フウロソウ科フウロソウ属

高原や高山の草地に生える多年草。高さは30〜80cm。葉は幅が5〜6cmで,てのひら状に
大きく5〜7裂,それぞれの裂片はさらに細かく分裂し,両面にあらい毛がある。紅紫色の花は径
2.5〜3cm。花弁の基部に白い軟毛がある。名前は石川県の白山にちなむが,信州各所で見る
ことができる。
 

ホソバノキソチドリ (細葉ノ木曽千鳥) Platanthera tipuloides var. sororia
  ラン科ツレサギソウ属

亜高山帯から高山帯の林縁や草地に生える多年草。高さ20〜40cm。葉は楕円形で長さ4〜8
cm。茎の先に10〜20個の黄緑色の小さな花をつける。唇弁の長さは5〜6mm。花の形は,
羽根を広げた鳥の姿にもトンボの形にも見える。地味なラン。
 

コバギボウシ (小葉擬宝珠) Hosta albo-marginata
  ユリ科ギボウシ属

日当りのよい湿地に生える多年草。葉は斜めに出て長さ10〜20cm,幅5〜10cmで楕円形
か卵形。高さ30〜40cmの花茎をだし,ラッパ形で長さ4〜5cm,紫の濃淡を持つ花を横向
きないしやや下向きに咲かせる。若芽や葉柄は山菜として珍重される。
 

マルバダケブキ (丸葉岳蕗) Ligularia dentata
   キク科メタカラコウ属

山地の草原や林下に生える多年草。高さ1m近くになる。根生葉は長い葉柄を持ち,フキに似た径
40cmくらいの腎円形の丸くて大きな葉になる。先はまるく,縁には歯牙がある。花は黄色で散
房状に数個から十数個つき,径は8cmほど。

あちこちにあるわけでもないが,がさつに繁り黄橙色の大きな花を咲かせるのでよく目立つ。
 

シシウド (猪独活) Angelica pubescens
 セリ科シシウド属

山地の斜面ややや湿った日当りのよいところに生える多年草。高さ1〜1.5mほど。葉は大部分
が根元の方にあつまり,2〜3回3出複葉。(鳥の羽のように複数の葉がついた枝が箒のように分
枝して出てくる)
茎の先に,花火のような大型の花序をつける。和名の猪独活は大型でイノシシが喰うウドの意だが,
ウド(ウコギ科タラノキ属)と違って食用にはならない。
 

  麦草ヒュッテ前

夏場のシーズン,春秋の土曜休日・連休などには,JR茅野駅と長野新幹線佐久平駅からバスが入
る。でも便利さは自前のアシには替え難いのか,ヒュッテ前の広場はマイカーでぎっしり。
 

 メルヘン街道最高地点

以前,この標識には「国道最高地点麦草峠2127m」と誇らしげに大書してあった。しかし志賀
・草津道路が一般国道292号線になってしまったため,国道最高地点のタイトルは渋峠2172
mに奪われてしまった。 ...それでもカンバン降ろすどころか,メルヘン街道最高地点と書き
換えて掲げつづけるこの往生際の悪さ。いいねぇ。(笑)
 

クガイソウ (九蓋草) Veronicastrum sibiricum
  ゴマノハグサ科クガイソウ属

クガイソウの花,クローズアップ。夏から秋,茎の先に長い穂のような総状花序を出して,淡紫〜
青紫色の小さな花を多数つける。花冠は長さ約8mm,先は4裂し2本の雄しべと1本の雌しべが
突き出す。

峠から一気に下って標高1700mのカラマツ林業センターふるさとの森付近にて。
 

コオニユリ (小鬼百合) Lilium leichtlinii var. tigrinum
  ユリ科ユリ属

日当りのよい山地の草原に生える多年草。高さ1〜2mになる。葉は線状披針形で長さ10〜15
cm,幅0.5〜1cm。ムカゴはつかない。茎の先端と上部の葉の脇から花柄を出して,橙色の
径7〜8cmの花を咲かせる。花被片は6個で黒紫色の斑点があり,くるりと反り返る。
クルマユリによく似るが,クルマユリは葉が茎の一箇所から放射状に輪のように生えるので区別で
きる。

おなじく,カラマツ林業センターにて。←食堂兼土産物店,公衆トイレと広い駐車場あり。
 

シラカンバ (白樺) Betula platyphylla var. japonica
  カバノキ科カバノキ属

山地の夏緑林から亜高山帯にかけて生える落葉高木。樹皮は白く,紙状にはげる。
八千穂高原自然園付近,ほとんどシラカバのみからなる純林がひろがる。
 

 高原野菜畑

疾風怒濤のダウンヒル(?)で豪快に山を降り,人里に。まず目に入ってきたのは高原野菜の畑。
さらに落ちて行くと集落が,そして佐久甲州街道国道141号線につきあたって麦草峠は終わった。
 


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