乗鞍岳畳平・夏 その1

長野県南安曇郡安曇村,岐阜県大野郡丹生川村; 2002年7月21日,22日撮影


今年の春の訪れは早く,いつもは冬枯れのゴールデンウィークの乗鞍高原もすっかり春の装い。そ
の後5月に大雪があったものの季節の歩みは早く,今年の乗鞍岳の高山植物の咲き具合,まったく
気が気ではありません。

で,その畳平のお花畑。今年は何故か花期の早いものも遅いものもごっちゃ。ハクサンイチゲの大
群落がすっかり散っている一方で,花期が早いはずのキバナシャクナゲが咲き残っていたりして,
なーんか妙な雰囲気。
 

7月21日撮影 (一部22日撮影)

  大雪渓と大渋滞

今年の春の大雪の名残か,大雪渓も例年にない規模で迫る。夏スキーを楽しむ人たちにとっては堪
えられない。
道路の方も,来年から交通規制でマイカーの乗り入れが出来なくなるため,駆け込み需要の大渋滞
も例年にない規模で迫る。コトリとも動かない車列の中でハンドルを放せないお父さんたちも,堪
えられない?
 

ハクサンイチゲ (白山一花) Anemone narcissiflora
   キンポウゲ科イチリンソウ属

高山の湿り気のある草原に生える多年草。高さ15〜40cmくらい。3〜4枚の柄のない茎葉を
輪生させ,茎葉の中心から数本の花柄を散形状に出して先端に径2cmほどの花を1個づつつける。
花弁はなく,5個の白い花弁にみえるのは萼片である。

畳平のバスターミナルから降りて行くと,真っ先に目にする白い群落である。しかし,残念ながら
ここの群落はもう散り加減。残っている花も,接写しようと間近に迫るとかなりくたびれている様
子も窺える。
 

 霧にけむる,ハクサンイチゲの群落

突然雲の中に取り込まれたように,あたりは真っ白になった。白いハクサンイチゲの花も,ゆっく
りと霧の中に溶け込んでゆく。
 

ミヤマクロユリ (深山黒百合) Fritillaria camtschatcensis var. alpina
   ユリ科バイモ属

高山の草地に生える多年草。高さ10〜50cmくらいだが,畳平では25cmくらい。葉は3〜
5枚が輪生して2−3段つき,披針状長楕円形で長さ5〜10cm,幅1〜2cmほど。茎の先端
に1〜2個の花をつける。花は暗紫褐色で,6枚ある花被片は長さ2〜3cm。両性花と雄花があ
る。花に悪臭のあることは,意外と知られていない。
 

 (22日撮影)

ハクサンイチゲは終わりかけだったが,クロユリは丁度見頃。霧に濡れているところなどは,この
花の謎めいた雰囲気にぴったり。
 

 コイワカガミの群落

あたりの草原には,ハクサンイチゲとともにクロユリ,コイワカガミ,チングルマ,ミヤマキンバ
イ,アオノツガザクラなどなど。しかし,去年見かけたモミジカラマツやシナノヒメクワガタは,
...まだなのか?
 

  あっという間に霧におおわれてしまった

いかにも高山らしい雰囲気。真っ白けになっても足元だけは見えるので,天気が多少悪くとも植物
の観察は可能。しかし...けっこう濡れる。
 

ミネズオウ Loiseleuria procumbens
  ツツジ科ミネズオウ属

高山の岩礫地に生える,常緑の小低木。高さ10cm程度。茎は枝分かれして横に広がる。葉は対
生して革質,広線形〜狭長楕円形で長さ1cm程度,幅1.5〜3mm。枝先に2〜6個の花が上
向きに咲く。花冠は鐘形で中ほどまで5裂し,淡紅白色で径約5mm。1属1種。
 

ミヤマキンバイ (深山金梅) Potentilla matsumurae
 バラ科キジムシロ属

高山の礫地や草地に生える多年草。高さ10〜20cm。しばしば群落を作る。葉は苺のような3
枚の小葉を持ち,先は丸く,縁にあらく尖った鋸歯がある。葉の両面に粗い毛がある。茎は上部で
枝分かれして,先端に径2cmほどの黄色い花を数個つける。

遊歩道の傍らに。
 

ミヤマダイコンソウ (深山大根草) Geum calthaefolium var. nipponicum
  バラ科ダイコンソウ属

高山の礫地や岩の割れ目に生える高さ15〜30cmの多年草。根生葉は3〜5枚の小葉に裂けて
長い柄を持つ。目立つのは頂小葉で,径4〜14cmの大きな円形で縁に不ぞろいに裂けた鋸歯が
ある。花茎は上部でまばらに枝分かれして,径2cmくらいの黄色い5弁の花をつける。
 

ミヤマキンポウゲ (深山金鳳花) Ranunculus acris var. nipponicus
   キンポウゲ科キンポウゲ属

 (22日撮影)

亜高山〜高山帯の草原に生える多年草。高さ10〜50cm。葉は円形で径3〜8cmほどだが,
3〜5つに深裂する。茎はよく枝分かれする。花は数個が茎の上部に散房花序につき,径約2cm
で花弁には光沢がある。萼片は船形で外側に長毛がある。

以上,よく似た黄色い花3種。
他に畳平で見られる黄色い花にシナノキンバイがある。シナノキンバイの花は径3〜4cm,花び
らに見える黄色い萼片を5〜7個持つ。花弁は濃い橙色で線形,長さ5〜10mm弱で雄しべより
も短い。
 

キバナノコマノツメ (黄花ノ駒ノ爪) Viola biflora
  スミレ科スミレ属

亜寒帯から高山帯の湿り気の多い草地に生える多年草。高さ5〜10cm。茎は細く,2〜3枚の
葉を出す。葉は円心形または腎形で長さ1〜2cm,幅1.5〜3.5cmで縁に浅く波状の鋸歯
があり,薄くやわらかい。高さ2〜6cmの花柄の先に,長さ約1cmの黄色い花を1つ咲かせる。
花弁は細い。

台湾・ヒマラヤから北半球の寒地に広く分布する。
 

  天気が良くなってきた

ピーカン不許可! ...とは言うけれど(?)やはり明るいと花の色も冴える。
 

コイワカガミ (小岩鏡) Schizocodon soldanelloides form. alpinus
  イワウメ科イワカガミ属

高山の草地に生える常緑の小低木。高さ5〜10cmに直立する花茎の先に数個の花をつける。花
は筒状漏斗形,紅紫色で径1〜1.5cm,長さ1.5〜2cm。先が細かく裂ける。

チングルマやアオノツガザクラなどとともに草原に群生していることが多いが,ハイマツの下生え
になっていることもある。
 

キバナシャクナゲ (黄花石楠花) Rhododendron aureum
  ツツジ科ツツジ属

高山帯のハイマツ林中や岩場に生える,高さ20〜50cmの常緑低木。枝は横に広がる。葉は長
楕円形〜広楕円形で長さ2〜6cmほど,幅1〜3cmで革質。夏,枝先に散房状に3〜10個の
花を咲かせる。花は漏斗形で径3cmほど,淡黄色で上部内面に濃緑色または赤褐色の斑点がある。
 

  キバナシャクナゲの群落(22日撮影)

この花は花期が比較的早く,この時期(7月中〜下旬)は散ってしまっていることが多い。畳平バ
スターミナル下の高山植物園から不消池方面へ至る登山道にて。
 

 ミヤマキンバイと鶴ヶ池

あいも変わらず,渋滞する道路。ハイカーで鈴なりの登山道。それを横目に,涼しげなミヤマキン
バイの群落。
 

  まーだ渋滞してるし。ご苦労さま。

稜線に浮かぶ夏雲。午後の日に輝く大雪渓。さて,下山するか。
 


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