乗鞍岳畳平・秋 その2

長野県南安曇郡安曇村,岐阜県大野郡丹生川村; 2002年8月29日撮影


夏はおもむろに息を吹き返し,真っ青な空には夏雲が。しかし,コバイケイソウは黄葉し,ハクサ
ンイチゲやクロユリも枯れかけ,チングルマは綿毛をのばし...畳平はすっかり秋の気配。午後
になって雲が湧き日差しが翳ると,すーっと秋が顔をのぞかせます。
 

チングルマ (稚児車) Sieversia pentapetala
 バラ科チングルマ属

高さ15cmほどの落葉小低木。花が終わり,実をつけたところ。花のあと花柱が羽毛状に3cm
ほど伸び,風車のように見える。若い実はこのように赤味を帯びて見えるが,しばらくするとすっ
かり「枯れ尾花」状態。駆け足で過ぎて行く秋の侘しさを際立たせてくれる。
 

ウサギギク (兎菊) Arnica unalaschcensis var. tschonoskyi  別名 キングルマ
  キク科ウサギギク属

高山の草地に生える多年草。高さ10〜30cm。葉は対生して倒卵状長楕円形〜倒披針形,長さ
は5〜15cm弱で先がするどい。全体に短い毛が生える。夏,対生または互生する小さな葉をつ
けた花茎を伸ばし,先に径4〜5cmの黄色い花を一つつける。

この時期はもう花期としては遅いほう。沢沿いで日当たりのわるいこの場所でかろうじて咲き残っ
ていた。植物園遊歩道から不消ヶ池(きえずがいけ)方面へ登ってゆくルート沿い。
 

ミヤマホツツジ Tripetaleia bracteata
   ツツジ科ホツツジ属

亜高山帯の林縁や湿原に生える落葉低木。高さ30〜50cm。葉は倒卵形で先が丸く長さ1〜3
cm,幅0.5〜2cm,やや革質でつやがある。総状花序に径1.5cmほどの白い花を咲かせ
る。萼は5つの裂片に分かれ,花弁は緑白色で3枚,平開して反り返る。日本特産属。
 

ミヤマダイコンソウ (深山大根草) Geum calthaefolium var. nipponicum
   バラ科ダイコンソウ属

高山の礫地や岩の割れ目に生える高さ15〜30cmの多年草。根生葉は3〜5枚の小葉に裂けて
長い柄を持つ。目立つのは頂小葉で,径4〜14cmの大きな円形で縁に不ぞろいに裂けた鋸歯が
ある。花茎は上部でまばらに枝分かれして,径2cmくらいの黄色い5弁の花をつける。花びらは
円形で,先がややへこむ。和名は近縁のダイコンソウの根生葉が羽状複葉で,ダイコンの葉に似て
いることから由来する。

この株も,植物園遊歩道から不消ヶ池(きえずがいけ)方面へ登ってゆくガレ場の脇の咲き残り組。
 

ハイマツ (這松) Pinus pumila
 マツ科マツ属

高山帯で群落を作る常緑低木。本州中部以北の高山帯における代表的な植生である。幹は分岐して
横に拡がり,高さは1〜2m。実は1年かかって熟す。今年は「豊作」なのだろうか,あたり一面
にころころ実っている。
 

 摩利支天岳の山頂で輝くコロナ観測所のドーム

 ひと登りして振り返る

ガレ場を直登して県境尾根からくる車道と合流し,さらに登る。心地よい風が吹き抜ける。
富士見岳と摩利支天岳の鞍部からは眼下に乗鞍高原の集落,遠く蓼科山,八ヶ岳,はるかに南アル
プス,中央アルプス...午前中なら富士山も見えたかもしれない。
 

チシマギキョウ (千島桔梗) Campanula chamissonis
  

 キキョウ科ホタルブクロ属

高山の岩礫地や岩場に生える多年草。葉は根元に集まって付き,狭い長楕円形か倒披針形で長さは
1.5〜5cm,幅0.5〜1.5cm,表面につやがあり,縁に細かい鋸歯がある。夏,高さ5
〜15cmの花茎をのばして先端に花を1つやや横向きに咲かせる。花冠は青紫色で鐘形,先は5
裂し,長さ3〜3.5cm。花冠の内側や縁に白い毛が生える。
 

今回久々に見かけたチシマギキョウ。畳平には圧倒的にイワギキョウが多いが,丹念に探すと見つ
けることができる。チシマギキョウとイワギキョウは非常に良く似ているが,見分けるポイントは
花の内側や縁に毛が生えている(チシマギキョウ)か毛がない(イワギキョウ)か,萼片に歯牙が
ある(イワギキョウ)かない(チシマギキョウ)か,花が上向きに咲く(イワギキョウ)か横向き
に咲く(チシマギキョウ)か,など。
 

イワギキョウ (岩桔梗) Campanula lasiocarpa
  キキョウ科ホタルブクロ属

高山の岩礫地や岩場に生える多年草。葉は根元に集まって付き,倒卵形または被針形,光沢がなく
ふちに粗く歯牙がある。夏,5〜15cmの花茎を伸ばし,先端に花を1つやや上向きにつける。
花冠は青紫色,鐘形で5裂し,長さ2〜2.5cmで無毛。
 

トウヤクリンドウ (当薬竜胆) Gentiana algida
   リンドウ科リンドウ属

高山の砂礫地にはえる多年草。高さは10〜30cm。しばしば群落をつくる。花冠は長さ3〜5
cm,緑色の斑点がある。畳平に秋を告げる花。これが咲き終わると山は紅葉のシーズン,そして
初雪が...
 

 不消ヶ池(きえずがいけ)

その名の通り,ひと夏中水を湛えた不消ヶ池。岸辺にはわずかに雪も残っている。
 

  位ヶ原全景

高い木が生えなくなる森林限界の様子が良く分かる。下部にはダケカンバなどの木がちょぼちょぼ
生えているが,上のほうはマットのように拡がるハイマツの海。ハイマツだけでなくキバナシャク
ナゲやウラジロナナカマドのような潅木も混じっていて,紅葉するとそれがよくわかる。
 

 主峰剣ヶ峰3026m

乗鞍岳とは主峰剣ヶ峰を始め,摩利支天岳,富士見岳,大黒岳,魔王岳などなど,この山域を構成
する峰々の総称である。

剣ヶ峰の中腹には名物,大雪渓。春の大雪の名残か,この時期にしては大きく残っていて,スキー
を楽しむ人の姿もちらほら。でもコースは10m足らず?えっちら登って,ちょろり。また登って
は,ちょろり。
 

コマクサ (駒草) Dicentra peregrina
 ケシ科コマクサ属

火山性の高山の砂礫地に生える多年草。花の形が馬の顔に似ていることから,駒草。

県境尾根から摩利支天岳コロナ観測所への道路脇のガレ場に多い。残念ながら,今年はもう終わり
かけ。遠目に見ててちょうど良い...
 

  雲が迫る!

植物園の遊歩道が迫り来るガスに飲み込まれてゆく,一大スペクタクルシーン。我を忘れて見入る
傍らで,小さな女の子が「こわい,こわい!」と大泣き。
 

 畳平ターミナル

雲が上がってきて,気温も下がってきた。お約束の「天ご来光そば」食べて,下山しよう。
 

ウラジロナナカマド (裏白七竃) Sorbus matsumurana
  バラ科ナナカマド属

亜高山の林縁や高山帯下部の低木林中に生える,高さ1〜2mの落葉低木。葉は9〜13枚の小葉
からなる奇数羽状複葉。小葉は長楕円形で長さ3〜6cm,幅1〜2cmで裏面が粉白色を帯びる。
球形または広楕円形で径1cmくらいの赤い実をつける。秋には真紅に紅葉し見事。

夕暮れの位ヶ原,道の両側には点々と赤い実をつけたナナカマド。紅葉も見事だけど,これはこれ
で風情がある。
 

 雄大積雲

乗鞍高原鈴蘭,観光センター前駐車場にて。乗鞍岳の稜線が雲に飲み込まれそう...
今日も一日,良き日でありました。
 


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